韓国野党が大統領に辞任要求 弾劾準備、「内乱罪」と主張
12月4日
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は12月3日夜、非常戒厳令を布告したが、4日未明、国会が解除決議を全会一致で可決したため、わずか6時間で撤回に追い込まれた。戒厳令は憲法第77条に基づき、国会の過半数の賛成で解除要求が可決されると大統領に解除義務が生じるため、尹氏はこれを受け入れざるを得なかった。
尹氏は戒厳令布告の理由として、野党「共に民主党」が政府予算案を拒否し、国家機能を麻痺させていると主張。軍や警察を動員し、政治活動や集会の禁止を通じて国会を封じ込めようとした。
しかし、国会本館への戒厳軍進入が野党議員らの抵抗で遅れ、その間に解除決議案が可決された。さらに、与党議員18人も解除決議に賛成するなど、与党内でも分裂の兆しが見られた。
「共に民主党」など野党は、尹氏の戒厳令布告を「内乱罪」に該当するとし、弾劾手続きを準備している。内乱罪が適用されれば尹氏は在任中でも刑事訴追を受ける可能性があり、最悪の場合は死刑または無期懲役が科される。一方で、弾劾訴追手続きが進む可能性も高く、尹氏の政治的基盤は大きく揺らいでいる。
今回の戒厳令失敗は、尹大統領の指導力に大きな打撃を与え、野党の攻勢を強化する形となった。政治的混乱が続く中、尹氏がこの危機をどう乗り切るのかが注目されている。
野党は大統領に対し内乱罪を適用できないか検討する方針で、野党・祖国革新党の曺国(チョ・グク)代表は、尹氏による3日夜の非常戒厳宣言が刑法87条の「内乱」罪にあたると断じた。
参考:退任大統領の末路一覧
▼李承晩(り・しょうばん)初代〜3代大統領
李承晩ラインを引いて、竹島を不法占拠。数々の独裁的な政策を強引に断行した李承晩は、1960年4月の大統領選で圧倒的不利な状況だったため、不○で得票率100%という数字で当選。これを糾弾する大規模なデモが発生、暴徒化。政府が非常厳戒令するが、それでも抑えきれず、5月に李承晩は夜逃げハワイに亡命。
▼尹潽善(ユン・ボソン)第4代大統領
朴正煕による軍事クーデターで大統領を辞任。
▼朴正熙(パク・チョンヒ)第5~9代大統領
朴槿恵の父親。クーデターにより軍事政権を樹立。1979年10月晩餐会中に、恨み骨髄の側近に至近距離からピストルで銃殺される。
▼全斗煥(チョン・ドファン)第11、12代大統領
退任後に言論弾圧や不正蓄財の罪で、無期懲役。特赦で釈放されたが、2020年に光州事件をめぐる名誉毀損罪で有罪判決。追徴金約196億円の判決を受ける。
▼金大中(キム・デジュン)第15代大統領
韓国唯一のノーベル賞受賞(平和賞)金大中は南北首脳会談の直前に現代グループが事業の権利を得るべく行った北朝鮮への5億ドル(4億ドルとも伝えられてる)の違法な送金を命令し、中華人民共和国の北京・マカオ・香港を経由して金正日とその長男の金正男や側近の張成沢に渡ったとされる。
首脳会談は送金の見返りだったという見方があり、ノーベル平和賞受賞に疑問を投げかけられている。在任中に三男が、翌月には長男と次男が、それぞれ数十億円にのぼる賄賂を企業から受け取っていたことが発覚し逮捕。
▼廬武鉉(ノ・ムヒョン)第16代大統領
退任後、贈賄容疑などで側近や親族の逮捕が相次ぐ。支援者である製造会社の社長から夫人に約1億円、実兄の嫁に約5億円が供与されていたことも発覚。検察は盧氏の逮捕を決定。逮捕を恐れた盧氏は自宅近くにある巨大な岩から飛び降り自殺。
▼李明博(イ・ミョンパク)第17代大統領
在任中に事実上オーナーを務める会社の訴訟費をサムソングループに肩代わりさせるなど、約10億円の収賄疑惑が浮上し逮捕。懲役15年、約13億円の罰金。
▼朴槿恵(パク・クネ)第18代大統領
知人である崔順実という人物に国政介入させたとして弾劾。大統領としての職務停止後、韓国の大統領初の罷免。2021年1月14日、懲役20年の実刑が確定。2021年12月24日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領によって特別赦免を受け、刑務所から釈放される。