ヒラリー私用メール事件とボルトン FBI捜査 問われる「司法判断の一貫性」
8月25日
FOXニュースなど複数のメディアは、FBIがジョン・ボルトンを私用サーバーを使って極秘の機密資料をメール送信したスパイ防止法容疑で起訴を検討していると報道した。
アメリカにおいて「機密情報の取り扱い」をめぐる論争は繰り返し浮上してきた。2015年に発覚したヒラリー・クリントン元国務長官の私用メール事件であり、そして今、FBIによるジョン・ボルトン元国家安全保障顧問の家宅捜索が新たな焦点となっている。両事件を比較すると、司法判断の一貫性が改めて問われていることが浮き彫りになる。
ヒラリー・クリントン元国務長官の「私用メール事件」は、2009年から2013年の在任期間中に、公務のやり取りを国務省の公式メールサーバーではなく、自身が管理する私用サーバーを通じて行っていたことが2015年に発覚した問題である。
調査によれば、約3万通以上のメールが私用サーバーで送受信され、その中には「機密情報を含む可能性のあるメール」が少なくとも数百通存在していたとされた。この行為は国家機密の不適切な取り扱いに当たる可能性があるとして、FBIや議会による調査が実施された。

2016年、大統領選挙を控える中でFBIは最終報告を公表し、「極めて不注意であった」としつつも、意図的な違反や犯罪行為を示す証拠は見つからなかったとして起訴を見送った。しかし、司法省やFBIの判断が「政治的に偏っている」との批判を招き、共和党からは「国家機密を軽視した人物」として追及が続いた。結果として、この事件はクリントン氏の信頼性に大きな打撃を与え、2016年大統領選での敗北要因の一つとされている。
一方でボルトン氏の件では、FBIが自宅とオフィスを強制捜索し、私用サーバーを介して家族に機密文書を送信した疑いを徹底調査している。関係者によれば、この問題は以前から認識されていたが、バイデン政権下で追及が鈍化していたとされ、今回の強硬な捜査は「法の下の平等」を改めて強調する動きとも見られる。しかし同時に、ボルトン氏がトランプ大統領と長年対立してきた人物であることから、政治的背景を疑う声も少なくない。

両者を比較すると、「機密情報を私的サーバーで扱った」という構図は共通しているが、司法の対応は対照的である。クリントン氏は「不注意」とされ起訴を免れた一方、ボルトン氏には強制捜索という厳しい措置が取られた。この差は、法の適用が人物や政権の都合によって左右されているのではないかという不信を生む。もしクリントン氏が不起訴で、ボルトン氏が起訴されるならば、米国司法の一貫性はさらに問われることになるだろう。
結局のところ、今回の事案は「誰であれ機密情報を軽視すれば責任を問われる」という原則が守られるのか、それとも政治的配慮で基準が揺らぐのかを示す試金石である。クリントン事件での「不注意だが不起訴」という判断と、ボルトン氏への強制捜索が今後どのように結論づけられるのか。その行方は、米国が民主主義国家として司法の独立性と公平性を堅持できるかどうかを占う分岐点となる。(ソース:FOXニュース、NYP、Dailybeast)

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