NHK『クローズアップ現代』が報道 “ワクチン健康被害救済制度”の課題と現状
4月9日
2025年4月9日放送のNHK『クローズアップ現代』は、新型コロナワクチン接種後に健康被害を訴える人々と、国の「予防接種健康被害救済制度」の実態について取り上げた。
この制度は、1976年に施行された公的制度で、ワクチン接種による健康被害があった際、医療費や医療手当などが給付される仕組みである。しかし、申請手続きの煩雑さや審査の長期化により、実際に利用できていない患者が少なくないという。
番組では、ワクチン接種後に重度の倦怠感や口の痺れなどに苦しむ女性が登場。10か所以上の医療機関を受診し、100万円以上の医療費がかかったが、制度の利用には至っていないと明かした。また、兵庫県の男性は1年以上の時間を経てようやく認定を受けたが、「なぜここまで時間がかかるのか」と語った。

厚労省の統計では、これまでに約1万3000件の救済申請があり、そのうち約9054件(約7割)が認定されている。しかし、現在も700人以上が審査を待っており、毎月100件以上の申請が寄せられている。
兵庫県の一部自治体では、申請から認定までに平均で1年以上、最長で2年かかるといい、制度の実効性に疑問が投げかけられている。特に、申請窓口である市町村の体制が脆弱で、例えば川西市では保健師1人が全対応を担っており、この20年間で1度も申請のなかったワクチン救済制度が、コロナ禍で20件の申請を抱える中で疲弊しているという。
さらに、制度の審査における最大の課題は「因果関係不明」が99%を占めている点である。厚労省に提出される資料が医師の所見文書に限られ、画像データやカルテの提出ができないため、評価不能とされるケースが続出している。

川崎医科大学の医師は、「この制度はパンデミックを前提としておらず、接種者の多くが高齢者や基礎疾患を抱えていた」と指摘。
また、制度を監視する医薬品等行政評価・監視委員会の委員長である慶應義塾大学の磯部医師も、「未曾有の規模とスピードで展開されたワクチン接種に対し、制度の周知や準備が不十分だった。体制が適切だったか検証が必要」と苦言を呈した。
磯部氏はさらに、今も健康被害が進行中である現状を鑑み、マスメディア――NHKを含む――が継続的に問題提起し、国と自治体が責任を持って制度の改善・再検証を行うべきだと強調した。

参考記事


ソース:NHK