ネアンデルタール人からの贈り物か、それとも負の遺産か
■新型コロナ“重症化を予防する”遺伝子
4万年前に絶滅したネアンデルタール人。
この古代人類から現代人が新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ遺伝子を受け継いでいる。
こんな研究結果をOIST・沖縄科学技術大学院大学のスバンテ・ペーボ教授の研究グループが発表し、2月17日、PNAS・米国アカデミー紀要に掲載された。■日本人の約30%も保有
ネアンデルタール人は4万年前に絶滅したが、交雑によって、一部の遺伝情報が現代人に受け継がれている。
新型コロナが重症化するのを“予防する”遺伝子は別の研究グループによってすでに特定されていた。現代人の12番染色体の上にあり、新型コロナで重症化するリスクを約20%低下させる働きがあるという。ペーボ教授らは、この遺伝子が、ネアンデルタール人に由来していて、新型コロナウイルスが感染した細胞の中で、ウイルスの遺伝情報を分解する酵素の働きを高めていることを発見したと発表した。
ペーボ教授によるとこの遺伝子は、アフリカ以外に住む、約50%の人が持っていて
日本人もおよそ30%の人が保有しているという。
負の遺産は日本人には受け継がれず
■実は、より強力な“重症化”遺伝子も受け継いでしまっている
“重症化を予防する”遺伝子とは反対に、“重症化させる”遺伝子も、現代人はネアンデルタール人から受け継いでいるという。この遺伝子は重症化のリスクを2倍も高めているとする解析結果が、やはりペーボ教授らによって明らかにされている。
ただ、その分布には偏りがある。
“予防”遺伝子はアフリカ以外に広く分布しているのに対して、
“重症化”遺伝子はヨーロッパでは最大16%、インドやバングラデシュなどの南アジアは、なんと最大60%の人がこの遺伝子を受け継いでいるという。
逆に、日本や中国など東アジアの人々は、この遺伝子を持っていないとされる。つまり、ヨーロッパや南アジアの人たちが“重症化”遺伝子と“予防”遺伝子の両方を持つのに対し、日本人など東アジアの人は“予防”遺伝子しか持っていないというのだ。
“重症化”遺伝子は“予防”遺伝子より5倍ほど影響力は強いとしている。
ファクターX
■見えてきた祖先の受難
なぜ、このような偏りが生まれたのか。ペーボ教授は、「ネアンデルタール人から遺伝子を受け継いだ我々の祖先が、東アジアでコロナウイルスを含む疫病に襲われ、リスクがある遺伝子を持たない人たちが生き残っていったためではないか」と推察する。■“ファクターX”なのか
では日本人を含む東アジアの人々が“重症化”遺伝子を持たず“予防”遺伝子のみを保有していることは、死亡者や重症者が少ない理由、つまり“ファクターX”なのだろうか。「日本人が“重症化”遺伝子をもっていない遺伝的な幸運は“ファクターX”のひとつかもしれない」ペーボ教授
・ファクターXは山中教授が最初に発信した
新型コロナウイルスの感染者や死亡者の割合は欧米で高く、日本を含む東アジアでは低めだ。なぜなのか。ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大の山中伸弥教授は「ファクターX」(何らかの原因)が存在する可能性を指摘する(asahi.com)
CNNでは昨年10月に報道されている
(CNN) ドイツの研究チームは9月30日、新型コロナウイルス感染症の重症例の一部について、ネアンデルタール人から受け継がれた遺伝子が関連している可能性があるとの研究結果を発表した。
ネアンデルタール人の遺伝子の専門家らは今回、コロナ重症例との関連が指摘されるDNA鎖を調査。そのうえで、ネアンデルタール人から欧州人やアジア人に受け継がれたDNA配列と比較した。
2020.10.02 Fri posted at 14:00 JST
これまでのファクターXは「BCGワクチン」と「交差免疫」とされていた
注目すべきは「人口100万人あたりの死亡者数」です。アメリカやブラジルでは100万人あたりで500人以上が死亡。同等かそれ以上の死者が、欧州や南米地域で出ています。
一方、日本、中国、韓国のほか、この表にはない東南アジア諸国を含むアジア全体で、100万人あたりの死者数は低い数値を示しています。また、死者数だけでなく、100万人あたりの感染者数も少ない傾向にあります。
結論からお伝えしましょう。
アジア諸国の被害の少なさの要因であるファクターXは、「BCGワクチン」と「交差免疫」の存在なのではないかと考えられています。