露疑惑のトリック暴かれる
2022/2/21
米国における最近の動きに関する日本での報道は、ウクライナ問題をめぐるロシアとの対立だけという感じである。だが内政では次期の2024年大統領選をも左右しうる重大な異変が起きていることも無視できないだろう。
いわゆる「ロシア疑惑」が共和党のトランプ陣営の罪ではなく、民主党側の巧緻な捏造(ねつぞう)工作だったことを証する捜査が大幅に進んだことである。
「16年の大統領選ではトランプ陣営がロシア政府機関と共謀し米国民の票を不当に操作した」とする疑惑は実は民主党のヒラリー・クリントン元国務長官の陣営がそのための「推測と物語」を創作した産物だったというのだ。この衝撃的な展開を明らかにしたのは連邦政府のジョン・ダーラム特別検察官の捜査だった(産経)
ロシア疑惑に衝撃的新展開、ヒラリー陣営がトランプをスパイか 盗み取られていたトランプ陣営の内部情報
2022.2.16(水)
2016年の米国大統領選で共和党のトランプ陣営がロシア政府と共謀して投票を不正に操作したとする「ロシア疑惑」が、米国で新たな展開を迎えている。ロシア疑惑が実は民主党側の捏造工作だったことを示す捜査結果がさらに明らかになったのだ。
疑惑を捜査するジョン・ダーラム特別検察官が2月11日、ワシントン連邦地裁に捜査継続の中間報告申請書を提出した。その申請書には、ヒラリー・クリントン選挙対策本部を中心とする民主党陣営が、トランプ氏の自宅やホワイトハウスの執務室などに情報傍受の違法な工作を実施していた証拠があることが明らかにされていた。
クリントン選対から依頼を受けた弁護士が虚偽の「密告」
コネチカット州の連邦検事だったダーラム氏は、トランプ政権時代のウィリアム・バー司法長官に2020年10月に特別検察官に任命された。その主要任務は、トランプ大統領にかけられた「ロシア疑惑」の実態、とくに民主党側の工作について捜査することだった。
トランプ氏に対しては2016年の選挙戦中から「トランプ陣営はロシア政府機関とひそかに共謀して、選挙での票を不正に操作している」という疑惑が主に民主党側から提起された。その疑惑に対して2017年5月にロバート・モラー氏が特別検察官に任命され、集中的な捜査が始まった。だがその2年後には「共謀の事実を裏づける証拠はなかった」という結論が出された。
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その結果、今度は「ロシア疑惑」が民主党のクリントン陣営主体の捏造工作だったのではないかという疑惑が指摘されるようになった。ダーラム特別検察官による捜査はその真相を明らかにするためだった。
捜査はバイデン政権になっても続けられ、ダーラム検察官は捜査結果をワシントン連邦地裁の大陪審に諮(はか)って、2021年9月、大手法律事務所パーキンス・コール所属のマイケル・サスマン弁護士を虚偽証言罪で起訴した。
ダーラム検察官によると、サスマン弁護士は大統領選挙中の2016年9月、連邦捜査局(FBI)にトランプ選挙本部がロシアの銀行と秘密の交信を重ね、選挙での投票の不正操作を共謀しているという情報を伝えた。だが、この情報は虚偽だった。しかもクリントン選対からの依頼を受けての「密告」だったという。
サスマン氏は、クリントン選対から依頼を受けて、報酬を受け取りながら「密告」をしていた。ところが実際には一市民として義憤に駆られての通報だと虚偽の証言をしていたわけだ。
アパートやホワイトハウス執務室のサーバーに侵入
ダーラム特別検察官がこの2月にワシントン連邦地裁に提出した申請書には、新たに以下の捜査結果が記されていた。
・サスマン弁護士はクリントン陣営の依頼を受け、インターネット企業「ニュースター社」幹部のロドニー・ジョフィ氏にトランプ陣営の内部情報を秘密裡に取得することを求めた。ジョフィ氏は、サスマン氏と同じパーキンス・コール法律事務所所属でクリントン選対の顧問弁護士でもあったマーク・エリアス弁護士とも協力して、トランプ陣営がロシア政府と共謀しているという「推測」や「物語」をつくる工作を進めた。
・ジョフィ氏はトランプ陣営の内部の動きを知るために、選挙戦中はニューヨークのトランプタワー、トランプ氏の私的アパート、選挙後はトランプ大統領のホワイトハウスの執務室のそれぞれのサーバーに侵入して、不法に情報を窃取した。クリントン陣営はその工作に対して多額の報酬を払った。
・ジョフィ氏はこの情報窃取工作のために数カ所の研究機関や特定の大学に所属する多数のインターネット専門家、技術者を使った。サスマン氏はジョフィ氏との接触を保ち、クリントン選対とも連絡し合って、同選対に工作のための代金の請求を重ねていた。またサスマン氏はトランプ陣営についての「疑惑」をその後もFBIなどに伝えていた。
ダーラム検察官はワシントン連邦地裁に以上のような「申請」を述べて、その証拠はすでに得ていると主張している。
WSJが「最も汚いトリック」と非難
この主張のとおりに、クリントン陣営の工作がトランプ大統領のホワイトハウスの執務室での交信内容入手にまで及んでいたとすると、今後、米国議会などでも追及の動きに発展する可能性がある。
米大手紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は2月14日付の社説で「トランプ氏は本当にスパイされていた」と題して、ダーラム特別検察官の新たな捜査報告を正面から取り上げ、トランプ陣営に対する「ロシア疑惑」は「米国の政治史でも最も汚いトリックだ」として民主党側を非難した。
WSJの記事👇
同社説は、米国のメディアの多くがこの「ロシア疑惑」を事実であるかのようにして報じたことは厳しく反省されるべきだとも論じていた(jbpress)
これまでの経緯
・2016年大統領選のロシア疑惑=ヒラリー疑惑
2016年ヒラリー陣営の弁護士サスマン容疑者は、トランプ陣営がロシアの銀行を通じてロシア当局との間で秘密の通信を行っているという話をFBIに持ち込んだのだが、それが事実無根であるだけでなくクリントン選対を顧客にしていたことを隠していたことで罪に問われ、2021/9/16に起訴された。
サスマン容疑者は、FBIだけでなくマスコミにも偽の情報を持ち込んでおり、起訴状はサスマン容疑者が大手新聞の記者に会い、その結果、10月31日にロシア銀行疑惑の記事になり、その手数料を「秘密プロジェクトに関わる秘密会合」としてクリントン選対に請求していたことを明らかにしている。
・ヒラリーは偽情報を大統領選に利用
2016年の大統領選投票日の9日前、翌日ヒラリー・クリントン候補は「トランプはロシアとの関係に関わる疑惑に応える時が来た」とツイートして選挙に利用していた。
・ヒラリー陣営に関係する主な人物等
・「クリストファー・スティール」:元英国スパイ。クリントン陣営が資金提供し、民主党から報酬を得て、トランプ陣営がロシアと共謀したとデッチ上げた報告書を書いた人物。
・「イゴール・ダンチェンコ」:ダーラムによりFBIから逮捕、起訴された。クリストファー・スティールに偽の情報を提供した人物。
・「マイケル・サスマン」:ヒラリー陣営の弁護士。逮捕。トランプ陣営がロシアの銀行を通じてロシア当局との間で秘密の通信を行っているというFBIだけでなくマスコミにも偽の情報を持ち込んだ人物。
・「パーキンス・コーイ」:サスマンが所属する国際法律事務所。民主党とヒラリー・クリントンのような政治的クライアントを持つ。
・「マーク・エリアス」:元パーキンス・コーイの責任者だった民主党同盟の弁護士。トランプ陣営がロシアと共謀しているという工作をする
・「ロドニー・ジョフィ」:インターネット企業「ニュースター社」幹部、サスマンの依頼を受け、トランプ陣営の内部情報を秘密裡に取得