習近平政権の不動産税導入は景気悪化招く劇薬
10/24(日)
【北京=三塚聖平】中国の習近平政権が、日本の固定資産税に相当する「不動産税」を試験的に導入する。中国不動産市場では投機的な動きが過熱して住宅価格高騰が続いており、庶民が不満を募らせているためだ。習政権は、富裕層からの反発を押し切って強権で改革を進める構えだが、不動産税は景気悪化を招く劇薬となる可能性もある。
中国の立法機関、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は23日、不動産税を一部地域で試験導入すると決定。試行期間は5年間で、実施都市など具体策は国務院(政府)が決める。
不動産税の試験導入は、習国家主席の主導だ。中国共産党の理論誌「求是」によると、習氏は8月の党内会議で「不動産税の法制定や改革を積極的、確実に進めなければならない」と指示していた。
習政権は「共同富裕」を掲げ、貧富の格差解消に重点を置く。一部に集中する富の再分配が目的で、高所得層や企業に社会への還元を求める。そうした中、格差の象徴としてやり玉にあがるのが不動産だ。富裕層の投機的な動きを受け、住宅価格の平均年収に対する倍率は都市部では数十倍に高騰。庶民が簡単に手を出せるものではない。
不動産税で住宅価格高騰に歯止めを掛けることを狙う。
地方政府は国が所有する土地の使用権の売却収入を主要な財源としており、代替財源となる税導入で財源を安定化させて乱開発を防ぐ効果も期待される。
2011年には直轄市である上海、重慶で不動産税を試験導入したが、建物のみが課税対象だった。今回は土地も含めた課税で、試行を経て全国での本格導入を視野に入れる。党内を含めた既得権益層からの反発は根強いが、習氏は強権をもって断行する方針とみられる。
習政権は既に、不動産バブル退治へ融資規制を打ち出し、その直撃を受けて「中国恒大集団」など不動産大手が経営状況を悪化させた。不動産税の導入でマンション売却などが進めば大幅な景気悪化に直結する可能性もあるため、改革は〝もろ刃の剣〟といえる。
ネットの声
不動産税の税率、対象エリアを慎重に設定しないと、価格の下落に歯止めがかからなくなり、バブル崩壊のリスクが一気に高まる恐れがある。
景気に冷や水を浴びせて鎮静化はかっても、結局は不動産会社の収益を改善させる事には繋がらず、倒産していく。
市場の自然な動きを恣意的に操作しようとすれば、いずれそれがブーメランの如く跳ね返ってくる。
いずれにしても不動産市場は持たない。現状があまりに実態価格と乖離している、完全なバブル。いずれ崩壊するのは免れない。
不動産売買金額の約40%が中国地方政府の財源となっている現状、不動産市場が冷え込んで売買件数が低迷すれば、地方政府の財務体質を直撃する。