アメリカ最高裁、中絶の権利認める50年前の判例を変更か 政治サイトが「草案」リーク
2022年5月3日
米連邦最高裁が、人工妊娠中絶の権利を憲法が認めているとした1973年の判例を覆す可能性が高まっていることが2日わかった。米政治サイト「ポリティコ」が判断の草案を入手したとして公開し、過半数の判事が支持していると報じた。米国では、中絶は女性の権利だとする民主党と反対する共和党が激しく対立しており、草案通りの判決が出れば、社会の分断がさらに深まるのは必至だ。
最高裁の判断の草案が流出するのは異例で、政治的な思惑も透けるため、司法の信頼性が揺らぐ事態に発展する可能性もある。
73年の判決は、胎児が子宮外で育成可能になるまでの中絶を合憲と認めた。一般的に、妊娠から24週ごろまでとされる。しかし、南部ミシシッピ州は妊娠から15週を過ぎた中絶を原則禁止としたため合憲性が争われ、最高裁も昨年12月から審理を始めた。
今回流出したのは、同裁判の判決理由を示す「法廷意見書」の「第一草案」98ページ。73年の判断を「国家の歴史と伝統に深く根差していない」として「覆す必要がある」と明記。覆れば国家の統一基準はなくなり、各州の判断に委ねられるためミシシッピ州法は合憲となる見込み。
米国では民主党政権が選んだ判事か共和党かで司法判断が異なることも多く、政治的に対立する裁判では人数構成が注目される。最高裁は判事9人のうち共和党系が6人で、圧倒的多数。今回の草案も共和党系のアリート判事が作成し、ポリティコによると、ほかに少なくとも共和党系4人が賛成しているという。
草案が報じられた2日夜、最高裁周辺には抗議する市民と支持する市民が集まり、対立した。
民主党のペロシ連邦議会下院議長とシューマー上院院内総務は「何千万人もの女性が、身体の自由と、半世紀にわたって頼ってきた憲法上の権利を奪われる」と非難する共同声明を発表。共和党のコットン上院議員はツイッターで歓迎しつつ「最高裁と司法省は、あらゆる調査手段を使ってリークの真相を究明しなければならない」と強調した。(東京新聞)
抗議は最高裁判所の外で形成され始めている。これは始まりにすぎない
Breaking: Protests are beginning to form outside the Supreme Court. This is just the beginning. #GOPHandmaidsTale
pic.twitter.com/8OYnmRxZyN— MeidasTouch.com (@MeidasTouch) May 3, 2022
民主党、エリザベス・ウォーレン上院議員
私が怒っているのは、過激派の最高裁が、自分たちの過激な意見をこの国のすべての女性に押し付けることができると考えているからであり、それは間違っています。私は、中絶が違法とされる世界を見てきました。私たちは後戻りすることはできません。
大統領候補のエリザベス・ウォーレンがメルトダウンモード!
SEE THIS: Failed presidential candidate Elizabeth Warren in MELTDOWN mode!
— Breaking911 (@Breaking911) May 3, 2022
共和党、マージョリー・テーラー・グリーン議員
最高裁はロー判決を覆す準備をしている。私たちの生涯で最も重要で輝かしいニュースだ。正しい結果を得るために、私と一緒に神に祈りましょう。
生命は受胎から始まります。それを守りましょう。
The Supreme Court is preparing to overturn Roe—the most significant and glorious news of our lifetime. Join me in praying to God for the right outcome.
Life begins at conception. Let’s protect it. pic.twitter.com/SNdb6WUBXO
— Rep. Marjorie Taylor Greene (@RepMTG) May 3, 2022
ロー対ウェイド事件:「妊娠を継続するか否かに関する女性の決定は、プライバシー権に含まれる」として、アメリカ合衆国憲法修正第14条が女性の堕胎の権利を保障していると初めて判示し、人工妊娠中絶を規制するアメリカ国内法を違憲無効とした、1973年のアメリカ合衆国最高裁判所の判決である。(wikipedia)