デサンティスが、ウクライナに関与するのは米国の国益に反する旨の発言をしました。デサンティス知事の真意は何か。TNWの私見です。
デサンティス氏、侵略は「領土紛争」 共和知事、ウクライナ巡り波紋
2023/3/15
米南部フロリダ州のデサンティス知事は14日までに、ロシアによるウクライナ侵略を「領土紛争」として同国へのさらなる関与は米国の「重大な国益」ではないとの見解を示した。2024年の大統領選で共和党候補指名争いへの出馬が取り沙汰されるが、ルールに基づく国際秩序を守る米国と同盟友邦国の共通の利益とするバイデン大統領との対立を鮮明にし、波紋を広げている。
デサンティス氏は「米国の数々の重大な国益」に米国境の保護、米軍即応体制の整備、エネルギー安全保障確立、中国の経済・軍事力抑制を挙げたうえで「ウクライナ・ロシア間の領土紛争にさらに巻き込まれるのはそれら(重大国益)のひとつではない」と回答。
「戦いの続く限り」続けるとするバイデン政権の支援を「空の小切手」の資金供給とし、「明確な目的や説明責任を欠き、最も差し迫った課題から注意をそらすものだ」と批判した。
一方、トランプ氏は質問に「私が大統領だったらロシアは間違いなくウクライナを攻撃しなかった」とし、欧州は「米国がウクライナ支援に払った同額を少なくとも払うべきだ」と強調。前政権で国連大使を務め、先月名乗りをあげたヘイリー氏は「ロシアが勝利したら最も緊密な友好国の中国とイランがより攻撃的となる」とし、関与は米国の重大利益と主張した。
トランプ氏も先日「大統領に復帰したらウクライナ支援を停止する」とデサンティス氏と同様の趣旨の発言をしています
これについては「トランプ大統領の真意ではないと考える」旨の記事を書いたところです👇
トランプ大統領が、3月4日、保守派のイベントCPACで「大統領に就任したら、ウクライナ支援を停止すると述べた」と述べました。この発言はテレビ朝日でも報道があり、一部日本の保守から「とち狂ったのか」等の批判がありました。
トランプ前大統領は4日、共和党保守派による大規模イベントの演説で大統領への返り咲きに自信を示し、そうなれば、最優先でウクライナ支援を止めると表明しました。テレビ朝日
しかし、トランプ大統領の言葉は真意ではありません。
アメリカの保守はいま、反ウクライナです。トランプ大統領は保守派の考えを汲み取り、意向に沿った発言をすることにより、来る大統領選で保守派の支持を集めようと考えたのです。
大統領に返り咲いたとしても、ウクライナ支援をやめることはないと断言できます。
さらに、本当のところ、アメリカの保守派もトランプ大統領も本当にウクライナ支援を止めるべきだとは考えてはいません。その真意はバイデン批判にあるからです。
アメリカの保守派の反ウクライナの理由は大きく分けて3つあります
1.バイデンのウクライナ不正への批判(ブリスマとマネロン疑惑)
バイデンがウクライナの「ブリスマの汚職」を圧力をかけて潰し、その後ハンター経由で利益を得ていたという疑惑。疑惑というよりももはや真実です。
2.そもそも、バイデンの大失態でロシアがウクライナを侵略した
ロシアがウクライナの国境に大量の兵を集結させていた時、こともあろうにバイデンは「米軍を派遣しない」と明言したのです。これは大失態中の大失態で、これによりロシアは安心してウクライナに侵攻し、現在戦争は長引き終戦の兆しさえありません。
3.アメリカラストのバイデン。バイデンはウクライナを支援してばかりで、アメリカに目を向けない。
日本と同様に、保守派が一番怒っているのはこの点、「外国ファースト、自国ラスト」です。
バイデンはこれまでウクライナに世界最大、世界の支援額のおよそ半分の約10兆円の支援を行っています。一方、自国の国境が破壊され移民が大量に入んで治安が乱れていること、民主党政権の街が犯罪都市と化していること、インフレで市民が日用品さえ買えない状態であること、災害を受けた市民が苦しんでいること、については知らん顔で関心を向けず、金を注ぎ込もうともしません。
詳細は下記記事👇
トランプ大統領とデサンティス知事の世論調査は詰まってきている
この発言の影響ではありませんが、二人の差は縮まってきているように見えます。
トランプ大統領が出馬宣言した時には二人の差はダブルスコア以上開いていましたが、今は14ポイントまで縮まっています。
2024 National Republican Primary:
Trump 46% (+14)
DeSantis 32%
Haley 5%
Pence 3%
Cruz 2%
Cheney 2%
Pompeo 1%
Noem 1%
Christie 1%
T. Scott 1%
Sununu 1%
Youngkin 0%
Hutchinson 0%
Johnson 0%
Ramaswamy 0%
.
Head-2-Head:
Trump 51% (+11)
DeSantis 40%.@QuinnipiacPoll, 677 RV 3/9-13
— Political Polls (@Politics_Polls) March 15, 2023
デサンティス知事はまだ出馬宣言していませんが、世論調査が拮抗してきて、可能性が出てきたら出馬宣言する腹づもりだと思います。控えめに言ってやる気満々です。なぜなら、そうでなければ、カールソンの質問に「大統領選に出馬するつもりはないので答えは控える」と言うはずです。
2024共和党候補者(予想含む)のタッカー・カールソンへの答え全文
タッカー・カールソンは、潜在的な共和党大統領候補に、米国のウクライナ支援に関する立場を明確にするよう要請した。 ドナルド・トランプ、マイク・ペンス、ロン・デサンティス、ヴィヴェック・ラマスワミー、クリスティ・ノーム、グレッグ・アボット、ティム・スコット、クリス・クリスティが回答した。
Tucker Carlson requested that potential GOP presidential candidates clarify their positions on U.S. aid to Ukraine.
Donald Trump, Mike Pence, Ron DeSantis, Vivek Ramaswamy, Kristi Noem, Greg Abbott, Tim Scott, and Chris Christie provided responses.
Here's what they said. pic.twitter.com/zT5OvNAAxS
— Townhall.com (@townhallcom) March 14, 2023
以下、タッカー・カールソンの動画より抜粋
・トランプ大統領は、「取引はできる。戦争を止められる」。デサンティスとノームは「ヨーロッパの話しだ。アメリカの過度な介入はやめろ」
トランプ大統領「いや、米国の政権交代を支援すべきだ、そちらの方がはるかに重要だ。バイデン政権は我々をこの混乱に巻き込んだ張本人だ」
「双方が疲れていて、取引する準備ができている。会談は直ちに始めるべきだ、時間がない。死と破壊は今すぐ終わらせなければならない!」
裏切りマイクペンス「プーチンは今でも「ロシアの小さくいじめられる指導者」であり、彼の核戦争の話は侵略の始まりに使ったいじめの戦術である。しかし、プーチンに米国がいじめられることはないと知るべきだ。この政権は世界の舞台で力強くリードしてこなかったが、アメリカは今でも平和は力によってもたらされると信じている国なのだ」(相変わらず優柔不断で何を言ってるかわかりません)
フロリダ州知事 ロン・デサンティス「米国には、国境の安全確保、軍備の危機への対処、エネルギーの安全保障と独立の達成、中国共産党の経済・文化・軍事力の牽制など、多くの重要な国益があるが、ウクライナとロシアの領土紛争にこれ以上巻き込まれることはその1つではない。バイデン政権は、明確な目的や説明責任もなく、この紛争に「必要なだけ」事実上「白紙委任」して資金を提供し、わが国の最も差し迫った課題から目をそらすことになる。
「間違いなく、平和が目的であるべきです。米国は、米軍の派遣を必要としたり、ウクライナが国境を越えて攻撃的な活動を行うことを可能にするような援助を提供すべきではないだろう。したがって、F-16や長距離ミサイルは、テーブルから外しておくべきである。こうした動きは、米国を明確に紛争に巻き込み、世界の2大核保有国間の熱い戦争に近づける危険性がある。そのリスクは容認できない」
サウスダコタ州知事 クリスティ・ノーム(すでに出馬宣言)「米国にとっての最大の外的脅威は共産中国である。私たちのロシアへの反対は、多くの理由でこの脅威を高めています。1つは、ロシアを中国との同盟関係に追い込むこと。つまり、ロシアは近いうちに中国の大規模な兵器庫を利用することになるかもしれない。2つ目は、腐敗した国に武器を送ることで、自国の軍隊を弱体化させていることです。そして3つ目は、私たちはボールから目を離し、中国が彼らの銀行に便宜を図るのを許しているということです。これはヨーロッパの戦いであるべきで、私たちの戦いではない。核戦争の危険を冒してまで税金を浪費するべきではありません」。
「米国は、抑止力の武器として金融制裁に過度に依存するようになった。米国を憎む国々は、世界の基軸通貨であるドルから意識的に離れようとしている。中国、イラン、ロシアに対する制裁は、ロシア・ルーブルを強化し、中国を可能にした。漢貨交易を成立させるドルではなく、米ドルで」
テキサス州知事、グレッグ・アボット(トランプ大統領の盟友、保守中の保守)「”バイデン大統領のウクライナにおける白紙委任外交政策は、敵対国から嘲笑と軽蔑を買うだけで、米国内の必要不可欠な資金を流用している。説明責任も目的もなくウクライナに資金を投じることは、明らかに失敗している。さらに悪いことに、バイデン大統領のウクライナへのアプローチは、以下のような犠牲を払ってきた。
「自国の優先事項に資金が不足している、あるいは無視している。ウクライナの国境にこれ以上資金や資産を送る前に、移民法を施行し、南の国境を確保しなければならない。テキサス州知事として、私はバイデンが作り出したこの国境危機に対応し、テキサス州民のために今議会で真の成果を出すことに集中しています」
今回のデサンティス氏の発言は、保守層から支持を受けています。理由は上記3つの理由です。
少なくともデサンティス氏はそれ(支持率アップ)を狙ったことは間違いありません。その意味ではこれは3月4日のトランプ氏の意図と同じです。
しかし、もしデサンティスが大統領になったとして、そしてまだ戦争が続いていたら、ウクライナ支援を全て打ち切りロシア寄りになるとは考えられません。そんなことをしたらロシア、そしてそれに近い中国が台頭してくることは目に見えているからです。
デサンティス氏の真意も、トランプ大統領や保守層と同じ上記の3つ目の理由、バイデンいい加減にしろ、「自国に目を向けろ」だと思います。