オーストラリア産石炭輸入禁止した中国、電力難で信号消えて工場も止まる
9/28(火)
中国がオーストラリアとの紛争によりオーストラリア産の石炭輸入を禁止したが、代替輸入減が見つからず、石炭不足により電力難が発生し、工場だけでなく一般家庭も打撃を受け始めたとブルームバーグが26日に報道した。
ブルームバーグは、中国がオーストラリア産石炭輸入を中断して石炭価格が急騰し、石炭発電に支障をきたしているとしながら、本当の危機は「恒大問題」ではなく「電力難」と伝えた。
こうした中、中国当局が二酸化炭素排出目標をクリアするために石炭など化石燃料発電を規制していることも状況をさらに悪化させている。
電力難でも習近平国家主席は来年2月に北京で開かれる冬季五輪の際には世界に北京の青い空を見せるべきだとし化石燃料発電に多くの制限をかけている。
これによりアルミニウム精練所から繊維工場、大豆加工工場に至るまで多くの工場で操業が中断されている。
電力難が特に深刻なのは、江蘇省、浙江省、広東省だ。これら3省は中国の製造業基地だ。これらの地方は中国の製造業基地だけでなく世界の製造業基地だ。この地域の電力難が厳しくなれば世界の供給網に影響を及ぼしかねない。
広東省電力局と広東電力は広東省の全官公庁にエアコンの温度を26度以上に設定し、3階以下の事務室はエレベーター使用を中断するよう要請し電力量削減に参加させている。
23日に瀋陽市では電力制限の目的で再び信号まで使用が中断され、深刻な交通混雑が発生したという。
電力難は工場だけにとどまらず一般家庭に広がっている。中国の経済専門メディア財新は27日、先週末に北部の遼寧省、吉林省、黒竜江省の東北3省の住民が大規模停電を体験したと報道した。
一部の都市は3日連続で停電し、さらに電力供給が止まる時間がますます早まっており日常生活にも支障が出ているとの不満が続出している。
地域メディアは電力難による停電が来年3月まで続くものと予想した。
中国当局はこうした強力な措置の理由として、習近平政権が提示した2030年の二酸化炭素排出量目標を達成するための措置がなされなかったためだと主張している。だが海外メディアは中国の電力難がオーストラリア産石炭輸入禁止の副作用だと指摘した。
オーストラリア政府がファーウェイの5G通信事業参加排除と新型コロナウイルス起源に対する中国責任論提起と国際社会の独立的調査を要求し、中国は報復次元で昨年10月からオーストラリア産石炭の輸入を禁止した。
中国で深刻な電力不足 アップル・テスラ向け工場停止
2021年9月27日
中国で深刻な電力不足が起きている。当局が環境対策として石炭を主燃料とする火力発電所の発電抑制に動いたことが要因で、同国メディアは全国の約3分の2の地域で電力供給を制限したと報じた。米アップルや米テスラ向け部品を生産しているとされる工場が操業を停止し、日系企業にも影響が出始めている。
上海市のメディアによると、電力不足が起きているのは20省・自治区・直轄市。このうち、江蘇省では今月下旬から、1000社を超える企業が工場を2日稼働した後に2日停止しているという。同省にはスマートフォンや電気自動車(EV)などの工場が多い。
また自動車や家電メーカーが集積する南部・広東省でも企業向けの電力制限を開始。東北の黒竜江省や吉林省、遼寧省では工場だけでなく、市民生活にも影響が及ぶ。
この影響で、アップルやテスラに部品を供給しているとされる台湾の乙盛精密工業は26日、江蘇省の子会社が30日まで操業を停止すると発表
アップル向けの半導体関連部品を手掛けているとされる別の台湾企業、日月光半導体製造の子会社も27日までに、同省の工場を30日まで停止すると明らかにした。
影響は日本企業にも出ている。広東省広州市内に工場を持つブレーキ部品大手の曙ブレーキ工業では平日の一部稼働を止め、土日に稼働日を振り替えて生産している。スタンレー電気の広州と天津市にある自動車ランプ工場でも稼働に一部影響が出たが、「必要な供給量は確保できている」。
中国で電力不足が起きたのは、習近平(シー・ジンピン)国家主席が掲げた「2030年までに二酸化炭素の排出量をピークアウトさせ、60年までに実質ゼロにする」との目標実現に向けて、地方政府が達成に向けて懸命になったためだ。
多くの地方政府はこれまで、新型コロナウイルス禍で低迷した地域経済の立て直しを優先してきた。ただ習指導部が一転して排出量抑制にカジを切ったことから、環境対策の強化に動いた。
参考記事
(画像:AC)